2021年3月23日三宅章介「切妻屋根の痕跡のための類型学」Cone and the cityから端を発したタイポロジー・シリーズ「TYPOLOGY EVERYWHERE」をお届けします。TYPOLOGY(類型学)とは、個々の現象や形態の類似点を抽出し、それらの本質を理解しようとする学問の方法です。写真表現の世界では、1950年代末から産業遺産となりつつあった給水塔やサイロなどを可能な限り同じ構図で撮影し並べたベッヒャー夫妻が有名で、現在ではコンセプチャルアートとして高い評価を受けています。スマホがすべての人の手元にあり、図らずとも誰もがタイポロジー的なアプローチに挑める環境にある現代。タイポロジーは何処にでもあるのです。それに自覚的であるかどうかだけのことなのです。ここでは様々なテーマで写真を撮影する人たちのタイポロジーを紹介したいと思っています。記念すべき第1回は、写真家・三宅章介さんの「切妻屋根の痕跡のための類型学」。京都の各地に点在する取り壊された町屋の跡、かつて赤瀬川源平が「トマソン」として類型化した痕跡も京都の開発の歴史と照らし合わせることで新たな意味を持ちます。京都写真美術館ギャラリー・ジャパネスクのインタビューでは、三宅さんがベッヒャーを意識し、画角を揃え、光量を揃えるために曇天を待つなど、ストイックにタイポロジーを追求する姿勢が窺えます。https://kyoto-muse.jp/japanesque/133424chignittaのために三宅さんは、3枚ずつトーンを変えた「切妻屋根の痕跡」を用意してくださいました。どうぞお楽しみください。赤々舎から現在、作品集も発売されています。http://www.akaaka.com/publishing/Akiyoshi-Miyake.html■ 三宅章介「切妻屋根の痕跡のための類型学」ステートメント京都では老朽化した町家が取り壊され、そこここに空き地が出現している。空き地に面した建物の外壁にはかつてあった隣家の屋根の痕跡が刻まれている。その屋根の下で営まれていたかもしれない日々の暮しを偲ばせる。5年前に父が他界し、神戸の実家を処分した。昭和30年代に摩耶山のふもとを切り拓いて建てたものだ。今は更地となり、新しい住宅が建てられ、かつての面影はまったくない。未練なく、綺麗さっぱりなくなっていることを爽快に思う半面、これが京都だったらという思いもよぎる。僕はいにしえの京の町並みの風情が失われ、無残な姿を晒していることに、正直言ってあまり抵抗感がない。むしろ、インバウンド需要を狙って、厚化粧をほどこし、テーマパーク(見世物)化することにこそ、祖先の遺産で食っているような、あざとさを感じている。人も町も、生きておればこそ、時に醜態を晒すものだ。時の流れの中で人の営みの痕跡が重なり、その層のところどころが綻びて、まるでパッチワークの様相を呈している。むしろ、そんな京都に僕は惹かれる。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。世の中にある人とすみかと、またかくの如し。鴨長明「方丈記」 三宅章介 プロフィール1970年、京都芸大の1回生だった私は中原佑介がコミッショナーをつとめた東京ビエンナーレを見て、コンセプチュアルアートやもの派に衝撃を受けました。また、当時全盛のアレ・ブレ・ボケ写真に違和感を感じていたのですが、ベッヒャー夫妻の「匿名的彫刻――工業的建築物のタイポロジー」(1970)に出会い、非常なシンパシーを感じました。萩原朔美氏が1年かけてリンゴが腐っていく様子を定点観測した「TIME時間の痕跡」(1971)を知ったのものこの頃です。以来、作品に手の痕跡や自らの内面を反映させることを避け、反復的なプロセスをとおして自己を無化することをめさしてきました。70年代の美術界におけるストイックな動向が一転し、突然現れた80年代のニューペインティングブームに絶望し、一時中断したものの、もう半世紀、タイポロジーや定点観測を追いかけています。■CV1950 神戸市生まれ1976 京都市立芸術大学美術専攻科修了個展1974, 75, 77, 79, 80, 81, 83, 88 ギャラリー16他2018 「Ungeziefer」 ギャラリー162018-20 Typology for Traces of Gable Roofs I,II,III LUMEN Gallery2021 Typology for Traces of Gable Roofs 京都写真美術館グループ展1972, 89, 90, 95 OUR WORKS展 大阪現代美術センター他1973 田中功・三宅章介2人展 立体ギャラリー射手座1974 小林伸雄・三宅章介2人展 信濃橋画廊1977 小林伸雄・三宅章介2人展 田村画廊1979 実験-34人の方法と展開 京都市美術館1982 平面が相克する 神戸現代美術画廊 2017 三宅章介x藤本秀樹/1974→2017 京都嵯峨芸術大学2017-2020 京都写真展 Gallery Maronie2018,19,21 COLOR PARTY WEST イロリムラ公募展1974 大阪府民ギャラリー開館記念美術コンクール展1982 第3回日本グラフィック展1989 JPS(日本写真家協会)展1997 大阪トリエンナーレ1997版画1998 ‘98 ABC美術コンクール1998, 99 現代日本美術展2000 クラコウ国際版画トリエンナーレ2001 吉原治良賞美術コンクール2018 JPS(日本写真家協会)展2019 HIJU GALLERY-Open Exhibition受賞1997 第5回プリンツ21 グランプリ展 準グランプリ1998 第13回現代日本絵画展 佳作賞1998 京都美術工芸展 優秀賞1999 京展 京展賞2000 さっぽろ国際版画ビエンナーレ Q 氏賞2002 第17回京都芸術祭国際交流総合展 中国総領事館賞
Cone and the cityから端を発したタイポロジー・シリーズ「TYPOLOGY EVERYWHERE」をお届けします。TYPOLOGY(類型学)とは、個々の現象や形態の類似点を抽出し、それらの本質を理解しようとする学問の方法です。写真表現の世界では、1950年代末から産業遺産となりつつあった給水塔やサイロなどを可能な限り同じ構図で撮影し並べたベッヒャー夫妻が有名で、現在ではコンセプチャルアートとして高い評価を受けています。スマホがすべての人の手元にあり、図らずとも誰もがタイポロジー的なアプローチに挑める環境にある現代。タイポロジーは何処にでもあるのです。それに自覚的であるかどうかだけのことなのです。ここでは様々なテーマで写真を撮影する人たちのタイポロジーを紹介したいと思っています。記念すべき第1回は、写真家・三宅章介さんの「切妻屋根の痕跡のための類型学」。京都の各地に点在する取り壊された町屋の跡、かつて赤瀬川源平が「トマソン」として類型化した痕跡も京都の開発の歴史と照らし合わせることで新たな意味を持ちます。京都写真美術館ギャラリー・ジャパネスクのインタビューでは、三宅さんがベッヒャーを意識し、画角を揃え、光量を揃えるために曇天を待つなど、ストイックにタイポロジーを追求する姿勢が窺えます。https://kyoto-muse.jp/japanesque/133424chignittaのために三宅さんは、3枚ずつトーンを変えた「切妻屋根の痕跡」を用意してくださいました。どうぞお楽しみください。赤々舎から現在、作品集も発売されています。http://www.akaaka.com/publishing/Akiyoshi-Miyake.html■ 三宅章介「切妻屋根の痕跡のための類型学」ステートメント京都では老朽化した町家が取り壊され、そこここに空き地が出現している。空き地に面した建物の外壁にはかつてあった隣家の屋根の痕跡が刻まれている。その屋根の下で営まれていたかもしれない日々の暮しを偲ばせる。5年前に父が他界し、神戸の実家を処分した。昭和30年代に摩耶山のふもとを切り拓いて建てたものだ。今は更地となり、新しい住宅が建てられ、かつての面影はまったくない。未練なく、綺麗さっぱりなくなっていることを爽快に思う半面、これが京都だったらという思いもよぎる。僕はいにしえの京の町並みの風情が失われ、無残な姿を晒していることに、正直言ってあまり抵抗感がない。むしろ、インバウンド需要を狙って、厚化粧をほどこし、テーマパーク(見世物)化することにこそ、祖先の遺産で食っているような、あざとさを感じている。人も町も、生きておればこそ、時に醜態を晒すものだ。時の流れの中で人の営みの痕跡が重なり、その層のところどころが綻びて、まるでパッチワークの様相を呈している。むしろ、そんな京都に僕は惹かれる。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。世の中にある人とすみかと、またかくの如し。鴨長明「方丈記」 三宅章介 プロフィール1970年、京都芸大の1回生だった私は中原佑介がコミッショナーをつとめた東京ビエンナーレを見て、コンセプチュアルアートやもの派に衝撃を受けました。また、当時全盛のアレ・ブレ・ボケ写真に違和感を感じていたのですが、ベッヒャー夫妻の「匿名的彫刻――工業的建築物のタイポロジー」(1970)に出会い、非常なシンパシーを感じました。萩原朔美氏が1年かけてリンゴが腐っていく様子を定点観測した「TIME時間の痕跡」(1971)を知ったのものこの頃です。以来、作品に手の痕跡や自らの内面を反映させることを避け、反復的なプロセスをとおして自己を無化することをめさしてきました。70年代の美術界におけるストイックな動向が一転し、突然現れた80年代のニューペインティングブームに絶望し、一時中断したものの、もう半世紀、タイポロジーや定点観測を追いかけています。■CV1950 神戸市生まれ1976 京都市立芸術大学美術専攻科修了個展1974, 75, 77, 79, 80, 81, 83, 88 ギャラリー16他2018 「Ungeziefer」 ギャラリー162018-20 Typology for Traces of Gable Roofs I,II,III LUMEN Gallery2021 Typology for Traces of Gable Roofs 京都写真美術館グループ展1972, 89, 90, 95 OUR WORKS展 大阪現代美術センター他1973 田中功・三宅章介2人展 立体ギャラリー射手座1974 小林伸雄・三宅章介2人展 信濃橋画廊1977 小林伸雄・三宅章介2人展 田村画廊1979 実験-34人の方法と展開 京都市美術館1982 平面が相克する 神戸現代美術画廊 2017 三宅章介x藤本秀樹/1974→2017 京都嵯峨芸術大学2017-2020 京都写真展 Gallery Maronie2018,19,21 COLOR PARTY WEST イロリムラ公募展1974 大阪府民ギャラリー開館記念美術コンクール展1982 第3回日本グラフィック展1989 JPS(日本写真家協会)展1997 大阪トリエンナーレ1997版画1998 ‘98 ABC美術コンクール1998, 99 現代日本美術展2000 クラコウ国際版画トリエンナーレ2001 吉原治良賞美術コンクール2018 JPS(日本写真家協会)展2019 HIJU GALLERY-Open Exhibition受賞1997 第5回プリンツ21 グランプリ展 準グランプリ1998 第13回現代日本絵画展 佳作賞1998 京都美術工芸展 優秀賞1999 京展 京展賞2000 さっぽろ国際版画ビエンナーレ Q 氏賞2002 第17回京都芸術祭国際交流総合展 中国総領事館賞