アイウェイ・フーは、自らを「マルチディシプリン・アーティスト」と名乗り、様々なテーマを横断的に捉えて表現する芸術家。マレーシアのボルネオ島生まれ。現在は、クアラルンプール郊外を拠点に活動している。彼女は、自分自身をメディウムとして、食物やある種の所作を取り入れながら即興的かつ自発的な側面を持つパフォーマンスやビジュアルアート作品を創り続けています。私が初めて彼女の作品に出会ったのは2016年。国際アートフェアUNKNOWN ASIA Art Exchange Osakaにて”Beaming Girl”というビジュアルアートを携えて出展していた。目から発光する女性、もちろん本人が媒体だ。見えるのに見えない、見ない、あるいは見ることができない、そうしたテーマを掲げた彼女に惹かれずっと活動を追っていた。今回、こうして chignittaアートギャラリーでアイウェイ作品をシェアできること嬉しく思います。(キュレーション 笹貫淳子)
アイウェイ・フー
アイウェイ・フーは、ボルネオ島生まれ、現在はマレーシアのクアラルンプール郊外で活動。「異なるメディアの組み合わせとアートアプローチの特質」を追求することから「マルチディシプリン・アーティスト」と位置付けています。彼女の創作プロセスにおいて、お茶や食べ物、テキスタイル、音楽、文字、パフォーマンスアート、ビジュアルアート(ドローイングやビデオ)など実に様々なものが持つ「制限」を取り込んだ即興的かつ自発的なアプローチを踏んでいます。 2016年UNKNOWN ASIA Art Exchange Osaka招待作家、2019年・日本政府観光局(JNTO)主催の「ジャパン・アート・トラベル」のアーティスト・アンバサダーの一人。
まず前半では、"Daily Hat Object", "Baking Exercise", "Human Sculpture"という3つのプロジェクトを紹介します。これらは、2020年春以降のロックダウン期間中に生まれました。創作ツールも手に入らない制限された環境を逆手にとり、日常道具と芸術との新たな関係性を形成する方法を写真と動画で示唆しています。解説付きでお楽しみください。
■Daily Hat Object デイリー・ハット・オブジェクト
これまでの日常と切り離された非日常で制限された環境の中で、日常以外の何物でもない生活用品を帽子として身に纏う。一見、荒唐無稽な発想はユーモアに溢れ、私たちの身の回りの物(オブジェクト)との関係に新たな意味をもたらします。これには、さらに多くの表現の可能性がありそうです。
©️ Aiwei Foo / Daily Hat Object "Shirt on Hanger Mask 2020"
©️ Aiwei Foo / Daily Hat Object "A Demonstration on: Five Toilet Rolles Hat Plus"
■BAKING EXERCISE ベイキング・エクササイズ
芸術家が長く取り組んでいる努力の一つに、芸術と日常生活の境界線を取り除くという試みがあります。それはどういうことかというと、いわゆる「芸術然」したものだけがアートでは無いという芸術の形です。「ベイキング・エクササイズ」はパンを焼く過程のみを限定的に表現したパフォーマンスです。
©️ Aiwei Foo / Baking Exercise(I)
■ HUMAN SCULPTURE ヒューマン・スカラプチャー
ベーキング・エクササイズと同様に、「ヒューマン・スカラプチャー(人間彫刻)」もまた、いわゆる日常茶飯事的な所作や行動を取り上げたパフォーマンスで、芸術や人生の中に異なる視点を形成する試みです。
©️ Aiwei Foo / Human Sculpture(I)
『山門茶楼』の試み
このアートギャラリーの後半は、今Aiweiが最も力を入れている"Shaman Tearoom(山門茶楼)"というプロジェクトを紹介します。2019年シンガポール・フード・フェスティバルの一環として、前年にナショナル・ギャラリー・シンガポールから依頼されたAiweiの茶室プロジェクトをもとに、体験型のアート&ダイニング体験をキュレーションしたのが発端です。その後、2021年2月初旬に第1回シンガポール・セラミックス・ナウ2021(シンガポール・アート・ウィークの一環)にパフォーマンス・アート・セッションとして披露。彼女の協力者である音楽家のケント・リー氏とともに、音楽・静寂・器・茶道の所作を融合させた非常に実験的なパフォーマンスで、コロナ禍のためリモートによるライブストリーミングをマレーシアから世界中に中継されました。
■ Shamarn Tea Ceremony
Shaman Tearoomのアイデアは、この忙しい都市生活の中で、休息し、静止するためのコンセプトを提案することです。お茶をメディアとして、また表現言語として使うことで、茶室の中に様々なアートを取り入れようとする学際的なアプローチから始まりました。「アーティストが観客と対話するための即興的な行為としてのお茶会」という参加型セッションプロジェクトです。芸術と生活の境界を曖昧する思索しながら、アーティストと参加者がともにパフォーマンスを作り上げます。
Shaman Tearoomは、従来の茶道ではなく、多面的な意味を持つプロジェクトです。AiweiとKentは、時間も空気も全てが作品となるこの没入型のセッションを通して、言葉を超えた五感によるコミュニケーション、心の状態、今を受け入れることを示唆します。第1回シンガポール・セラミックス・ナウ2021で公開されたパフォーマンスビデオをご覧いただきます。
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